湯ノ沢温泉

湯ノ沢温泉について

森に囲まれた鄙(ヒナ)びた温泉

秋田県大館と青森県碇ケ関のあいだは、山中の峠道だ。この矢立峠の一帯は、あちらこちらに出で湯が湧く。いずれの湯も山中にひっそりとたたずみ、ひとつひとつがなかなかに個性的な温泉だ。国道7号を矢立峠から碇ケ関へ向かう途中を、沢伝いの道へ分け入る。車で5分ほど行けば、森に囲まれて、ぽつりぽつりと3軒の湯宿がある。湯ノ沢温泉。一軒宿ではないものの、それぞれの宿は歩いて数分のところに離れている。すべて泉質も異なり、3軒の宿だが4種類の湯がある。

泉質の違う山の出で湯

いちばん手前が「でわの湯温泉 湯の沢山荘」。ヒバで出来た浴室は、レトロにしてモダン。床は温泉の成分でウロコ状に固まっている。湯に含まれる土類の成分が、こんなに突出して多いことも、稀らしい。鉄分を含むので、指の指紋などが黒くなる。秋田県側の矢立温泉を「赤湯」と呼ぶのに対して、青森県側のこちらを「黒湯」と呼ぶ。
真ん中の温泉は「なりや温泉」。大正時代の創業で、浴室の雰囲気は共同浴場を思わせる。自炊の湯治に来る客は、常連ともなれば、自分の布団一式を宿に預けてあるらしい。津軽の農民が親しんできた湯治の宿である。
沢の道のどんづまりにあるのは「秋元温泉」で、この宿が湯ノ沢のなかでいちばん古い。四百年続く湯治の湯だ。火事に遭い、建物は真新しくなったが、湯治場の雰囲気が残っている。「三日一廻り」の霊泉として知られ、そのお湯は強烈な酸性で、相当に体に応えるから、湯治の仕方をよく聞いて、湯に浸かった方が良いだろう。
3軒とも、とても成分の濃いお湯なので、くれぐれも温泉のはしごをしないこと。せっかくの温泉の効能が消え失せるだけでなく、たとえば指紋の間が鉄と硫黄が化学反応を起こして黒くなったりする。

羽州街道の峠道

いまの国道から湯ノ沢への道を進むと、「でわの湯」に至る手前に、左へ折れる峠越えの山道がある。これがかつての羽州街道だった。ところどころに古い街道の遺構が残っていて、古道を偲ぶことが出来る。
湯ノ沢川には番所の跡があって、ここから急な山道を登ることになる。登りきった平らなところに、弘前領主が参勤交代のおりに休んだ御休み所があった。尾根を進むと、巨大な杉の切り株がある。この古道の峠はここで、この杉を「矢立の杉」と呼んでいた。秋田県側へさらに進めば、秋田杉の林を眺めることが出来る。この道を、菅江真澄や吉田松陰も歩いた。
羽州街道には、この古道のほかに、明治天皇の巡幸に際して作った明治新道や、その後に整備した陸羽街道、現在の国道もある。イザベラ・バードが来たのも、明治新道だった。陸羽街道は、「矢立温泉」付近で、蒸気機関車を三輌連結して峠越えしていた時代の鉄橋をくぐる。遊歩道を歩いて「矢立ハイツ」「矢立温泉」「日景温泉」へ抜けることも出来る。

湯ノ沢温泉の基本情報

施設名でわの湯・湯の沢山荘
泉質ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉
効能神経痛・リウマチ・アトピー・胃腸病・冷え症・婦人病・貧血症・小児病・発育不良
交通JR奥羽本線碇ヶ関駅下車後シャトルバス
施設名なりや温泉
泉質含硫黄-ナトリウム-塩化物泉(硫化水素型)
効能リウマチ・神経痛・胃腸病・婦人病・冷え症・骨折
交通JR奥羽本線碇ヶ関駅下車後シャトルバス
施設名秋元温泉
泉質含硫黄-ナトリウム-塩化物泉(硫化水素型)
効能リウマチ・神経痛・慢性皮膚病・慢性婦人病・冷え性・胃腸病・創傷・骨折後
交通JR奥羽本線碇ヶ関駅下車後シャトルバス

※掲載情報は平成20年2月時点のものです。各施設の営業日・営業時間・料金・条件等は事前にご確認ください

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